坑井掘削エンジニアリング

フラクチャリング・セメンチング

地熱井を成功に導くためにはさまざまなハードルを越えなければなりません。その中でもフラクチャリングとセメンチングは直接生産に関わる重要な技術分野のひとつです。

フラクチャリングとは、生産量や還元量の乏しい坑井の能力向上を図るため、高圧ポンプを用いて水圧により地層を破砕し、地層中の割れ目を進展させるものです。地熱では世界で最初の大規模フラクチャリングを北海道森地域で行って以来、当社は各地でフラクチャリングを実施してきました。

セメンチングは、蒸気や熱水を長期間安定供給するのに欠かせないケーシングセメンチングと、逸泥対策のためのセメンチングに大別できますが、運転中の地熱発電所近傍での掘削はそのどちらも坑井相互の干渉対策が大きな問題となります。そのため複雑で困難なセメンチングを採らざるを得ない場合が多く、当社はこれらのほとんどを自社で行い成功してきました。
また、ケーシングセメンチング中の逸泥発生のためにスラリー回帰が得られない場合は、その後の対策の稚拙により生産時に坑口装置が延伸したりケーシングが圧潰するおそれがあります。これらの重大な障害発生を防止するため、当社はケーシング間隙処理方法の特許を取得するなど状況に応じた最適な解決技術を有しております。

・フラクチャリング工事歴

フラクチャリング工事歴
森地域
17坑井約30回(アシッドフラック含む)
葛根田地域
27坑井約30回
松川地域
1坑井1回
八幡平地域
1坑井1回

・セメンチング工事歴

マルチステージケーシングセメンチング
マルチステージライナーセメンチング
インフレータブルパッカーケーシングセメンチング
パラサイトチュービングケーシングセメンチング
トラップウォーター除去を含むケーシング間隙処理方法

エア&エアレイテッドマッドドリリング、アンダーバランスドリリング、噴気誘導

エアドリリングとは泥水のかわりに空気を使用して掘削する方法です。日本で唯一の蒸気卓越型地熱地域である松川で、エアドリリングが実施されたのは昭和48年のことでした。以来、松川では貯留層保護と掘進率向上のため、生産領域の掘削にはエアドリリングが行われています。現在ではエアドリリングでもダウンホールモータを用いた傾斜掘りや、コア採取が可能になっています。

エアレイテッドマッドドリリングとは、泥水中に空気を混入して掘削する方法でエアドリリングと同様の効果が得られます。熱水型地熱地帯に有効なエアレイテッドマッドドリリングは、葛根田地域で行われています。また、雲仙火道掘削井での浅部では逸泥が頻発したため、大口径浅深度でもエアレイテッドマッドドリリングを試み、作業の効率化に成功しました。

エアドリリングの応用発展型にアンダーバランスドリリングが挙げられます。坑井内に高圧蒸気層と低圧逸泥層が同時に存在すると、重泥水による抑圧ができないことがあります。解決策として、坑井から蒸気熱水を噴出させた状態で掘削すること、すなわちアンダーバランスドリリングの採用が最も効率的ですが、この工法は僅かな判断ミスや誤操作も許されない高度な技術と設備が要求されます。当社では確かな技術と経験で、これまで掘削が不可能であった地域でも安全に目標深度まで到達した実績を有しております。

生産井の掘削が完了するといよいよ蒸気の噴気を行いますが、大型コンプレッサーを用いればエアリフトやエアリアクション等の噴気誘導作業も簡単にできます。当社では経験豊富な多数のエアオペレーターとコンプレッサー・ブースター・エア用坑口装置を保有しております。

・エア&エアレイテッドマッドドリリング、アンダーバランスドリリング工事歴

エア&エアレイテッドマッドドリリング、アンダーバランスドリリング工事歴

北海道森地域
岩手県松川地域
岩手県葛根田地域
岩手県安比地域
秋田県澄川地域
長野県中ノ湯地域
大分県熊本県豊肥地域
長崎県雲仙地域
鹿児島県山川地域

高温度地層掘削技術

地層温度が350℃を超えると、高温のため掘削が非常に難しくなります。例えば、トリコンビットはベアリングが損傷し、すぐに掘ることができなくなります。傾斜掘りの重要ツールであるダウンホールモータやMWDも機能しなくなり、坑跡制御が困難になります。抑留回避に不可欠のドリリングジャーも使用できません。また、泥水温度が上昇し沸騰を始め、極めて危険な状態になります。これらの障害発生を防止するために、当社ではトップドライブドリリングシステムを用いて坑内を連続的に冷却する工法を世界で初めて採用するとともに新型泥水冷却装置や高温用ツールスを活用し、葛根田WD-1A井において地層温度500℃以上の花崗岩を深度3729mまで掘削することに成功しました。これは深層掘削における世界最高温度掘削記録です。

この坑内冷却のノウハウを活かし、ローコストで高温度地層掘削を可能にする「トップサーキュレーションヘッド」を開発し、葛根田地域で活躍中です。本装置により、トップドライブドリリングシステムと同様の冷却効果が1/10以下のコストで得られます。
また、深度が500mより浅いところで地層温度が200℃を超える場合も、暴噴の危険性が高く技術的には難しい坑井のため十分な検討と細心の注意が必要です。高温度地層掘削は当社にお任せください。

葛根田WD-1A井温度プロファイル

葛根田WD-1A井温度プロファイル
(※画像クリックで拡大します)

トップサーキュレーションヘッド

トップサーキュレーションヘッド

高傾斜掘削

傾斜掘りの中でも、傾斜角が60°を超える高傾斜地熱井は、世界でもごく僅かしか掘削実績がありません。当社は、葛根田地域において68°の高傾斜井の掘削に昭和60年に成功して以来、60°を超える高傾斜井を5坑井掘削しております。そして、平成16年7月に雲仙科学掘削火道掘削井USDP-4にて帝石削井工業(株)と当社のJVが、火山地帯における傾斜角70°以上の高傾斜地熱井掘削に成功しました。この成果は、これまで偏距が遠くてあきらめていたターゲットに届きますし、掘削基地を新設せずに資源の可採範囲を拡げることができるなど、これまでの常識を変える出来事と言えます。

高傾斜掘削